学校へのICT導入に関する現状と期待

文部科学省、東京都教育委員会、ベネッセ教育総合研究所の調査結果より

学校へのICT機器導入に地域間格差

 文部科学省の「平成26年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、全国の公立学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)における教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は全国平均6.4人で、前年度の調査結果より0.1人減少した。
 2013年に閣議決定された第2期教育振興基本計画では、2017年度までに3.6人/1台の整備を目標としているが、同調査によると目標水準をクリアしている都道府県は、2014年度から全県立高校の新入生を対象にタブレット所有を制度化した佐賀県(2.6人/1台)のみで、1台当たりの児童生徒数が最も多い愛知県(8.6人/1台)との差が開く結果となった。

 また、41位:東京都(7.1人/台)、43位:神奈川県/千葉県(7.3人/台)、46位:埼玉県(7.8人/台)と、愛知県も含め、児童生徒数が多い都市圏で整備が遅れている状況が見られた。

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保護者世代はICT導入に「学習意欲の向上」を期待

 上記の調査で整備の遅れが見られた東京都であるが、東京都教育委員会は2016年1月、平成27年度第1回東京都教育モニターアンケート「都立高校におけるICT環境の整備及びICT教育の推進について」の集計結果を公表した。

 教育モニター82人(うち30~40代が46.3%、50代以上46.3%)の回答を集計したもので、高校生の保護者世代も多く含まれると思われる。

 アンケートは、パソコンやタブレット、電子黒板など、都立高校への教育用ICT機器導入に関する認知や今後の取り組みへの期待、情報モラル教育の必要性などを問うもので、以下、結果を抜粋して紹介する。

<アンケート結果(一部抜粋)>

●東京都教育委員会が高校へのICT機器の整備と活用に取り組んでいることを知っていた52.4%

●ICT機器は、授業や学習においてどのように利活用できると思うか
  音声・動画を用いたわかりやすい授業ができる 61.0%
  タブレット端末の持ち帰りによる家庭学習 4.9%

●ICT機器の利活用による生徒への効果として期待できることは
  学習意欲の向上 51.2%
  教科学力の向上 22.0%
  学習態度の改善  4.9%

●ICT利活用推進のため、教員に必要な能力は
  ICT機器を活用した授業を行う能力 59.8%
  ICT教材を制作する能力 7.8%

 ICT機器導入に対する認知は約半数とやや低い印象だが、ICT機器利活用の期待として、学力の向上よりも学習意欲の向上が大幅に上まわるなど、デジタルネイティブ第2世代と呼ばれる現在の高校生の特徴を踏まえたICTの有効活用が望まれている状況がうかがえる。

アクティブラーニングとICT活用

 一方、家庭学習におけるICT活用状況はどうであろうか。ベネッセ教育総合研究所が実施した「第5回学習基本調査(2015年)」によると、中学生の約5割、高校生の約6割が家庭での学習においてICTを活用しているという結果が出ている。活用の内容は、「辞書を使う」「情報収集をする」「分からないところを友達に質問する」が、中学生、高校生ともに5割を超え、勉強も含め、日常的にICT機器を活用する状況が見られた。

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 中央教育審議会の初等中等教育分科会教育課程企画特別部会がまとめた次期学習指導要領の「論点整理」では、思考力・判断力・表現力等を育む手法の一つとして「アクティブラーニング(AL)」を重視する方向性や、ICTなどの環境整備の重要性も示されている。

 必ずしもアクティブラーニングにICTが必要なわけではないと思われるが、各学校の取り組み実績や、前述した中学生・高校生のICT活用状況を見ると、ICTがALをより充実させる可能性があることは間違いない。

 高大接続改革の議論が進む中、大学でも少人数教育やALへの取り組みが広がっている。大学における教育効果を最大化し、優秀な人材を社会に送り出すためにも、高校までの基本的な学習環境の格差を可能な限り小さくすることが重要と思われる。

各調査の概要は以下の通り。

文部科学省「平成26年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」
【調査時期】2015年3月1日
【調査対象】全国の公立学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校 及び特別支援学校)

東京都教育委員会「都立高校におけるICT環境の整備及びICT教育の推進について」
【調査時期】2015年9月
【調査対象】東京都教育モニター 82人

ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」
【調査時期】2015年6~7月
【調査対象】
全国3地域(大都市「東京23区内」、地方都市「四国の県庁所在地」、郡部「東北地方」)の小学5年生・中学2年生(公立)
全国4地域(大都市「東京23区内」、および東北・四国・九州地方の都市群と郡部)の高校2年生(公立普通科)